見えない月
命日の花
今年も命日に花が贈られた
姉の命日に、私も父も母も知らない人から・・
もう何年になるのだろう・・・
もう二十数年前のこと
20代の姉が家の前で、車の中の男性と言い合っていた
私の姿に気づき姉にせかされ発進した車
テールライトが悲しく光っていた
その後、姉に夜のドライブに誘われた
田舎の牧場のある山道
小さな町の全貌が見えるというだけ・・・
ぽつり、ぽつり話し出す
遠くに話しかけるような口調
「姉ちゃんね・・・好きな人がいたんだ・・・
姉ちゃんは子供が大好きで
保母さんになったんだ
姉ちゃんの夢は子供を生むこと
その子を育てること
だから保母さんになったんだ
あんたみたいに頭良くなかったし
家にピアノもオルガンもなかったけど
頑張ってさ・・泳げなかったけど・・・・
でもね、保母さんにはなれたけど
姉ちゃん子供生めないんだ
姉ちゃん死んでもいいから
好きな人の子供生みたいんだけど
駄目なんだ
だから別れたよ・・・・
その人の子供生んで、育てたかったんだけど・・・
駄目だった・・・・姉ちゃん駄目だった・・・」
6歳年上の姉が語る言葉が毎年命日に思い出される
姉の病気は若年性糖尿病から初め、ミトコンドリア心筋症
そして脳萎縮・・・
憧れていた手紙の流れる文字がギザギザになり
言葉の数が減った
言葉が少なくなった
耳がまるきり聞こえなくなった
人口内耳を埋め込んだ・・・祖母の声を聞くために
最後は目が見えなくなり
音が聞こえない世界に
2週間一人で小用も我慢し続け逝ってしまった
思い出すのは
生きる薬だといいながら
父の作った野菜をほおばる姉の苦笑い
運動代わりに風呂に入る姉の赤い頬
私の娘達に絵本を渡す姉のやさしい目線
最後に私の手を払いのけた姉の意志
今年の盆も優しい香の中通り過ぎてゆく
このことを、話すべきか思案する夜が続く
来年も花が届くだろう・・・
母に電話した「俺が伝えるよ」
もう伝えなきゃ・・・
姉さんの思いを
彼に伝えて
「ありがとう」って言わなきゃ
彼が歩き出せない・・・
姉の命日に、私も父も母も知らない人から・・
もう何年になるのだろう・・・
もう二十数年前のこと
20代の姉が家の前で、車の中の男性と言い合っていた
私の姿に気づき姉にせかされ発進した車
テールライトが悲しく光っていた
その後、姉に夜のドライブに誘われた
田舎の牧場のある山道
小さな町の全貌が見えるというだけ・・・
ぽつり、ぽつり話し出す
遠くに話しかけるような口調
「姉ちゃんね・・・好きな人がいたんだ・・・
姉ちゃんは子供が大好きで
保母さんになったんだ
姉ちゃんの夢は子供を生むこと
その子を育てること
だから保母さんになったんだ
あんたみたいに頭良くなかったし
家にピアノもオルガンもなかったけど
頑張ってさ・・泳げなかったけど・・・・
でもね、保母さんにはなれたけど
姉ちゃん子供生めないんだ
姉ちゃん死んでもいいから
好きな人の子供生みたいんだけど
駄目なんだ
だから別れたよ・・・・
その人の子供生んで、育てたかったんだけど・・・
駄目だった・・・・姉ちゃん駄目だった・・・」
6歳年上の姉が語る言葉が毎年命日に思い出される
姉の病気は若年性糖尿病から初め、ミトコンドリア心筋症
そして脳萎縮・・・
憧れていた手紙の流れる文字がギザギザになり
言葉の数が減った
言葉が少なくなった
耳がまるきり聞こえなくなった
人口内耳を埋め込んだ・・・祖母の声を聞くために
最後は目が見えなくなり
音が聞こえない世界に
2週間一人で小用も我慢し続け逝ってしまった
思い出すのは
生きる薬だといいながら
父の作った野菜をほおばる姉の苦笑い
運動代わりに風呂に入る姉の赤い頬
私の娘達に絵本を渡す姉のやさしい目線
最後に私の手を払いのけた姉の意志
今年の盆も優しい香の中通り過ぎてゆく
このことを、話すべきか思案する夜が続く
来年も花が届くだろう・・・
母に電話した「俺が伝えるよ」
もう伝えなきゃ・・・
姉さんの思いを
彼に伝えて
「ありがとう」って言わなきゃ
彼が歩き出せない・・・
終らぬ夜
深く沈んだ世界に漂っていた
全てのものが信じられず
全てのものが怖かった
長い夜が終るの待つか
アルコールで夜を飛び越えるか
でもいつも夜が始まるのが怖かった
いろんな自分が言いたい放題
収拾の付かない心の中
色んなものから目を閉じて
夜が終らないと感じてた
もう夜が終ったはずなのに
薄目を開けて明るさを感じても
頬に朝の風を感じても
目を開けて朝を認めるのが怖かった
朝を認めると再び来る夜を想像しただけで
目を閉じていた
全てのものが信じられず
全てのものが怖かった
長い夜が終るの待つか
アルコールで夜を飛び越えるか
でもいつも夜が始まるのが怖かった
いろんな自分が言いたい放題
収拾の付かない心の中
色んなものから目を閉じて
夜が終らないと感じてた
もう夜が終ったはずなのに
薄目を開けて明るさを感じても
頬に朝の風を感じても
目を開けて朝を認めるのが怖かった
朝を認めると再び来る夜を想像しただけで
目を閉じていた







